人間ドックという呼び名は、現代では普通に使われていますが、どこか不思議に思ったことはありませんか?
決して犬とは関連性がないのに、「人間ドッグ」と呼び間違える人がいますが、「人間ドック」は「健康診断」のように、それだけで意味が分かる言葉とは違った、独特の呼び名であるように思えます。
人間ドックの「ドック」とは、意外なことに医療用語ではなく、船舶用語で、船体を修理したり建造したりするための施設をドックと呼ぶところからきているのです。
船のためのドックは、船の点検や修理などを詳しく行う所であり、船が航海に出た時に故障することなく、無事に走ることができるようにするためにあります。
この船を人間に置き換えて名付けられたのが人間ドックというわけで、人間も船のように長い人生という航海をしているのだから、身体の定期的なメンテナンスをすることが必要だとされたところからきているのです。
人間ドックは最初からこのように呼ばれていたわけではなく、人間ドックが行われるようになった当初は「短期入院精密身体検査」という物々しくて長い名称のものでした。
人間ドックが始まった当初は認知度も低く、重要性は理解できても、実際に受診する人はなかなか増えていきませんでしたが、新聞で特集されたとき、その呼び名も短く分かりやすい人間ドックと記載され、それ以降は病院などの施設でも一般の人たちでも人間ドックと呼ぶようになったそうです。
人間ドックという呼び名には、代わりがいない1人の人が人生を健康で過ごすことの意味が含まれる深いものだったのです。
大きな船を見ただけでは、その状態が分かりにくいように、人も外見を見ただけでは、病気が潜んでいるかどうかは分かりにくいものです。
症状が現れてから慌てて治療を開始することで、治療を長引かせたり、困難にしてしまったりすることなく、自分の身体を自分で守る意識の高さが必要だということが、人間ドックという名称で現わされているのです。